窓を開ける季節が短くなった?
心地よい風とこれからの住まい方
今年も待ちに待った秋晴れの日、窓を開けると心地よい風が通り抜け、思わず深呼吸してしまう———。
しかし近年、「窓を開けて気持ちいい」と思える日が減ってきていると感じませんか?春は花粉、PM2.5、黄砂、梅雨の湿気、長い夏は猛暑の影響によって自然の心地よい風を感じられる季節が年々短くなっています。

窓を開けられる季節は短くなっています
昔はもっと長かった「窓の季節」
20年前は4月中旬〜6月、9月〜10月頃が「窓を開けるのに気持ちいい時期」でした。ところが、気象庁のデータによると千葉県柏市周辺では、この25年間で夏の平均気温が約2℃上昇。真夏日は増え、秋の訪れは遅くなり、春は家族の誰かが花粉症ということで窓を開けにくくなっているのが現状です。結果として、自然の風を楽しめる期間は1〜2か月程度にまで短縮しているといって良いでしょう。

心地よい『秋の空気』
窓を開けにくくなった主な理由
① 気温上昇 ⇒ 外気温が30℃を超えると、窓を開けても熱風が入り夜になっても気温が下がらない。
② 花粉・PM2.5の増加 ⇒ 春や初夏は健康面から窓を閉めざるを得ない。
③ 騒音・防犯・プライバシー意識の高まり ⇒ 住宅密集地では開放しにくい。
④ 高気密・高断熱住宅の普及 ⇒ 一度冷暖房を使うと閉め切った方が快適で省エネ。
それでも「風を感じる暮らし」を大切に
自然の風は、温度や湿度、香り、音といった“季節の情報”を運んでくれ、風が通る家は体だけでなく心にもリフレッシュ効果をもたらします。設計の工夫によって限られた時期だけでも快適な自然換気は可能です。たとえば、東西、南北に抜ける風の通り道を考えた間取り、高窓・吹き抜けによる空気の流れの誘導、庇や植栽による日射コントロールなどが有効です。
設計で“季節を取り戻す”
パッシブデザインでは、夏は熱を逃がし、冬は熱を取り込むという自然の力を使い分けます。エアコンに頼る時間が長くなった今だからこそ、窓の位置や大きさを工夫することで自然の風を感じる心地よい瞬間を大切にしたいものです。短くなった“窓の季節”を取り戻すために、設計で風をデザインする住まいを考えてみませんか?
塩毛康弐