家づくりは「プラン」より先に「敷地と光」を読むことから始まります
住宅を設計する上で、日の入り方(=日照条件)を読み解かずに良い設計はできない。これは、長年設計に携わってきた中で強く感じていることです。
何故なら家は図面の中ではなく、実際の敷地と、その周囲の環境の中に建つものだからです。設計に着手する前に、私たちが設計を始める際、まず行うのは「間取りを考えること」ではありません。最初に行うのは、隣地建物の配置・隣地建物の高さ・建物までの距離・南側・東側・西側からの日照条件です。等時間日影図を作成しこれらを把握してはじめて、その敷地にとって最適な建物の位置や形が見えてきます。

季節と太陽と日当り
プラン集からの家づくりにはリスクがあります。最近では、「早く契約したい」「分かりやすく提案したい」という理由から、ハウスメーカーを中心にプラン集から敷地に合いそうな間取りを選び、そこから微調整するという進め方を目にすることが増えたと感じます。確かに分かりやすく、スピーディーではあります。しかし、その方法には大きな落とし穴があります。
敷地と周囲の環境を十分に見ずに間取りを決めてしまうと、冬に思ったより日が入らない、南向きのはずなのに隣家の影になる、リビングが一日中暗い、夏は西日が厳しく冬は寒い。といったことが、住み始めてから分かるケースが少なくありません。これは設計ミスというより、設計の順番を間違えた結果だと言えます。

隣家による影
本来、住宅設計は次の順序で考えるべきです。
1.敷地と周辺環境を読む 2.日照・風・視線を整理する 3.建物の配置とボリュームを決める 4.その上で間取りを考える
間取りはとても大切ですが、「敷地に対する答え」ではありません。敷地と環境に対する答えの上に、初めて間取りが成り立つのです。後悔しない家づくりのために家は、何十年も暮らし続ける場所です。一時的な分かりやすさやスピードよりも、この敷地で・この環境で・この家族が、どう心地よく暮らせるかを丁寧に考えることが、後悔しない家づくりにつながります。プラン集は参考になります。しかし、それを出発点にしてしまうと、敷地の個性や本来得られるはずの心地よさを見落としてしまうことがあります。家づくりは、まず敷地と光を読むことから。それが、私たちが大切にしている設計の基本です。
塩毛康弐










