南向きでも暗い家がある理由 ― 日当たりは「方角」だけでは決まりません

「南向きの土地なのに、思ったより家の中が暗い」実はこれは、決して珍しいことではありません。多くの方が南向き=日当たりが良いとイメージされますが、住宅設計においてはそれだけでは十分とは言えません。日当たりを左右する本当の要因は方角だけではなく、①隣地建物の高さ ②建物同士の距離 ③建物の配置 ④窓の位置と大きさ ⑤軒や庇の出 といった複数の条件が重なった結果です。南向きであっても、隣地に2階建てや3階建ての住宅が近接していれば、冬場は長時間日影になることもあります。冬の太陽は、想像以上に低い位置を通ります。そのため低い建物でも影が長く伸びる、隣家との距離が少し近いだけで日影になる、という現象が起こります。

冬の太陽高度はとても低い

図面上では問題なさそうに見えても、実際の敷地では「影が差し込む方向と時間」が大きく影響します。軒の出は「日を遮る」ためだけではありません、軒や庇というと、「日差しを遮るもの」というイメージが強いかもしれません。しかし実際には、夏の高い日差しは遮り、冬の低い日差しは室内に取り込むという役目です。軒の出を適切に設計することで、夏は涼しく冬は暖かい住まいが実現します。

夏・冬の太陽高度 

プラン集の間取りは、多くの場合「理想的な条件」を前提に描かれています。

①周囲に建物がない

②十分な敷地余裕がある

③日照条件が均一

しかし現実の敷地では、隣家がすでに建っていたり近い将来に建て替えの可能性があるといった制約が必ずあります。これを考慮せずに間取りを決めると、完成してから気づく「違和感」につながります。「暗いなら、窓を大きくすればいい」と思われる方も多いですが、これも誤解です。影の中にある窓は、いくら大きくしても暗く、逆に断熱性やプライバシーが下がります。大切なのは、どこから、いつ、どのように光が入るかを考えることです。

 設計とは、敷地条件への“答え”をつくることで良い住宅設計とは、用意された間取りを敷地に当てはめることではありません。この敷地で、この周辺環境で、この家族が暮らすための最適な答えを一から考えることです。

 次回は、「敷地調査で設計者が必ず見ている5つのポイント」をテーマに、なぜ現地を見るのか、図面だけでは分からないこと、プロが最初に確認する視点を、具体的にご紹介します。

 塩毛康弐