住まいとことわざ

適材適所  てきざいてきしょ

現在は「人の能力・特性などを正しく評価して、ふさわしい地位・仕事につけること」
などとよく使われますが、本来は大工が木材を使う時に生まれた言葉です。

伝統的な日本家屋や寺社などの建築現場での木材の使い分けがその語源で、
”適材適所”の材とは木材のこと。例えば土台には腐りにくい耐久性の高い桧(ひのき)を、内装の一部になる柱には木目の美しくやさしい肌合いの杉(すぎ)を、また
屋根や2階以上の重量を支える梁には強靭な松(まつ)をといった具合。

法隆寺の宮大工棟梁であった故西岡常一さんは、次のように言われています。
「木の育つ場所によって、峠の木は強いし、中腹の木は丁度いいし、谷の木はやわらかい。東面、西面、北面、南面の木もみな性格が違います。これは北側に生えていたからやわらかい、これは南側の日の当たるところで育ったので非常に硬い。
このように山の木にもそれぞれの性質がある、それを適材適所に使うことによって、
能力を発揮するのです。」

ちなみに「きりきり舞い」という言葉がありますがこれは箪笥(たんす)に使う木材の
桐(きり)のことではなく、大工道具のキリのように回転するところから「きりきり舞い」
とも呼ばれていたそうです。

【法隆寺】