建物と吸音

住宅ではあまり取り入れることが少ない吸音について書いてみます。

 

建物内で話したり音を発すると壁や床、天井等に跳ね返って自分の耳に届くわけですが、建物の(主に)表面材料によって音の返り方が違います。

 

部屋を吸音するというのは、材料自体に吸音性能のある吸音材料若しくは吸音構造の壁や天井に用いることによって、部屋の中での残響を減らすことを目的としておりまして、吸音が必要な部屋としては、主に静かな環境が必要な部屋(TVやラジオ、音楽等のスタジオ、コンサートホール、会議室等)がまず思い浮かびます。

 

一般的な吸音材料には遮音性を期待できないため吸音単体で考えることは少なく、基本的には遮音(壁)とセットで考えるのが普通です。

 

では、部屋の吸音性を増すとどうなるかといいますと、部屋の残響が減ります。(当たり前なのですが)

 

オーディオが好きな方ですと、スピーカから発せられた音に、出来るだけ他の音を混ぜたくないので、まずは外部からの音の侵入を防ぐために部屋の遮音性を上げます。その上で今度は部屋の中の響きを調整したりします。

 

なぜ部屋の中の響きを調整するのかというと、もしも響き過ぎる部屋だと、スピーカーから発した音が何回も壁や天井を反射して、自分に耳に届くときの明瞭性が失われてしまうからです。

 

だからと言って、単に吸音すればよい結果が得られるというわけでもなく、逆に響きの心地よさを失う場合もあります。(この辺りは好みの差もあります)

 

響きは部屋の大きさ、形状でも変わってきます。

 

音の障害にフラッターエコーやロングパスエコーというものがありますが、反射した音が遅れて聞こえてくる現象で、部屋内でやまびこが発生するようなイメージです。

 

人間の耳は、一般的には50ms(0.05秒)離れた音をそれぞれ別の音として認識できると言われているので、簡単に考えますと、音の速さ(約340m/秒)×0.05秒で、17m先の平行な壁に反射した音は遅れて聞こえると考えられます。(これは周囲が鏡で覆われているダンススタジオ等で起こりやすいです)

 

住宅で17mの部屋はあまりないので、フラッターエコーの心配はまずないのですが、リビングダイニングなどで表面仕上げがコンクリート打ちっぱなしやタイル、そしてガラス面が多い場合などは、音が反射して、話し声が聞き取りにくい等のケースも考えられます。

 

住宅の部屋の大きさであれば、家具やカーテン等(効果的なのは厚みのある絨毯)を配置することで響き抑えられますが、それでも響きが気になる場合は、壁の表面に吸音材を張るなどで解消できます。

 

ちなみに、ものすごく吸音した室に無響室というものがありますが、静かすぎて長い時間いられたものではありません。

もちろん住むための部屋ではありませんが、静かすぎるというのも精神衛生上、あまり良くありませんね。

 

TAKANAKA