壁掛けエアコンによる間欠、連続方式別の室温シミュレーションの比較

前回の続きで、今回は壁掛けエアコンの間欠運転と連続運転で室温、光熱費のシミュレーションをしてみたいと思います。

今回は冬の暖房についてシミュレーション致します。

 

今回のプランも、下図の自立循環型住宅のモデルハウスを使用させて頂きました。

※前前回のブログで、日射による室温シミュレーションをした時と同じ条件(隣家ありの条件)にしているので、よければ無暖房時との比較などもご覧ください。

(1F平面図と2F平面図 ※延べ面積は約120㎡(36坪程度)

 

(モデルハウスの外観 北西の角が十字路になっており、東、南東、南に隣家がある想定)

 

 

【条件】

・弊社は千葉県の我孫子市にあるので、地域条件は我孫子(6地域)とします。

・建物の断熱性能(UA値)は0.46(G2グレード)を想定

・4人家族、住宅事業主の判断基準による生活サイクルを想定

・エアコンの設定温度は暖房時22℃、冷房時26℃とします。

・電気代は27円/kWhを想定(基本料金、賦課金は含まず)

・暖房期間は10月24日~5月1日までを想定

・冷房期間は5月21日~10月4日まで想定

・ある年の1月28日(晴れのち曇り)~1月29日(くもり)を想定(日射取得は少なめの寒い日を想定)

 

まず【間欠運転】をシミュレーションしてみます。

・エアコン設置個所はリビング、寝室、子供室1,子供室2の4台とします。

(運転スケジュール)

リビング   (暖房) 7~13時、16~21時    (冷房) 7~13時、16~21時

寝室     (暖房) 6~7時、22~24時   (冷房) 22時~翌6時

子供室1・2  (暖房) 6~7時、22~24時   (冷房) 20時~翌6時

※画面下グラフの背景が黄色く色がついている部分はエアコンが稼働している時間で、青色の線がリビングの温度変化、紫色の線は寝室の温度変化となります。

※赤い棒グラフは暖房負荷、黄色の棒グラフは日射取得熱になります。

前回のブログでも書いたのですが、特徴としましては、エアコンがある部屋はすぐに暖まりますが、間仕切りで仕切られた他の部屋との温度差は大きくなります。

動画を再生していただくと、リビングの暖房時に、和室との温度差が大きくなっているのが分かります。

この時、ドアや引戸を開けていれば和室や廊下等へも暖気は流れますが、その分暖める容積が増えるので暖めたい部屋がすぐには暖まらなくなるということが起こります。

ですので、通常、間欠運転の場合は必要以上にドアは開けっぱなしにしないと思います。

メリットとしては、必要なときに必要な個所をすぐに冷暖房ができることです。やはり連続方式に比べると、運転時間が短くなる分、年間の冷暖房負荷は減りますので冷暖房費は下がるケースが多いです。

 

上のシミュ―レーションの場合、必要なエアコンのサイズは、リビングに18畳用、寝室12畳用、子供室にそれぞれ6畳用となりました。

エアコンのサイズは、プラン(エアコンで冷暖房する部屋の容積)とエアコンの運転スケジュール、断熱性や気密性、換気方式、日射取得量によって大分変りますので、今回は1つのケースとして捉えて頂ければと思います。

 

 

次に、間欠空調時の年間冷暖房費についてシミュレーション結果を見てみます。

暖房費で約4万円、冷房費で約1万円となっています。

6地域でUA値がG2グレードですと、間欠冷暖房の場合、年間の冷暖房費は大体5~6万程度になるシミュレーション結果が多いです。

※電気代の基本料金は無いところもありますが、上記の冷暖房費が約5万円とすると再エネ賦課金を入れたら+6300円程度上がます。

冬の窓からの日射取得熱を増やしたり(逆に夏は遮り)、熱交換換気と組み合わせたりすることで、冷暖房費は下がります。

熱交換換気を入れると、その分換気の電気代は増えるので、トータルコストとしては3種換気の方にメリットがあると思いますが、冷暖房不使用時の温度ムラは減りますので快適性の向上は見込めます。

 

次に【居室連続運転】の場合です。

・エアコン設置個所はリビングと寝室の2台を想定します。

(運転スケジュール)

リビング (暖房) 24時時間運転  (冷房) 運転なし

寝室   (暖房) 運転なし    (冷房) 24時時間運転

連続運転の場合は、パッと見て1Fのエリアと2Fのエリアが全体的に同程度の温度になっているのが分かります。

ドアが閉まっていれば、このように均一な温度分布にはならないのでは?と思った方はまさにその通りで、連続運転なので居室間のドアは開け放しにしてる状態を想定しました。

もちろんドアは閉めることもあるので、ドアを閉めても出来るだけこの状態に近づくように設計の工夫が必要になります。

浴室の温度が一時的に低くなるのは局所換気による熱ロスがあるためです。

上記運転スケジュールの場合、リビング、寝室に必要なサイズは8畳用エアコンとなりましたが、このサイズでは1Fの暖房のみで全体を賄うのは少々厳しいようです。

(全館暖房に必要なサイズではなく、あくまでその居室に必要なサイズになっています)

 

先ほどの間欠運転に比べると、リビングのエアコンサイズは18畳用から8畳用に下がった結果となります。

 

なぜ連続運転の場合はエアコンサイズが小さくできるかについて説明しますと、上記の赤い棒グラフ(暖房負荷)を見て頂くと分かりやすいです。

間欠運転の場合、運転初期に高負荷運転になっているのが分かります。冷たくなった空気を一気に暖めようとするので、エアコンの瞬発的なパワーが必要になります。

そのため、エアコンのサイズは高負荷時に合わせて大きなサイズが必要になります。

それに対して、連続運転時は、24時間赤い棒グラフが出ていますが、突出したピークはなく、暖房負荷は概ね2.5kWh以下となっています。

これを自動車で例えるなら、間欠運転は一時的にアクセルを踏み込んで加速力が必要としますが、連続運転は一定の速度で走っているような感じに近いです。

そのため、連続運転の場合はエアコンサイズを小さくすることができます。

ただし、断熱性、気密性がある一定以上あるというのが必須条件です。断熱性はG2レベル以上、気密性はC値で1以下はほしいと考えています。

 

次に光熱費を見てみます。

間欠運転に比べて暖房に掛かる費用は、年間で約1万2千円程度多くなっていますが、機器交換交換を含めたランニングコストを考えたら、あまり変わらないか安くなる可能性もあります。

また、比較のため夜間電力は見込んでおりませんが、夜間電力を18円/kWhで見込めば暖房費4.4万円、冷房費9千円程度になります。

 

 

次は、連続運転の運転スケジュールを変えてみます。

【2台同時使用連続運転】

・エアコン設置個所はリビングと2F寝室の2台を想定します。

(運転スケジュール)

リビング (暖房) 24時時間運転  (冷房) 24時時間運転

寝室   (暖房) 24時時間運転  (冷房) 24時時間運転

 

リビングと寝室のエアコンを両方とも24時間運転をさせた場合、グラフは22℃で一直線になっています。

この運転スケジュールの場合、必要なエアコンサイズは、リビングで8畳用、寝室で6畳用です。

温度環境だけ考えたら、これは理想かもしれませんが、冷暖房費は上がります。

暖房費約6.3万円、冷房費約1.4万円、併せて7.7万円です。

※夜間電力考慮すると、暖房費約5.4万円、冷房費約1.3万円、併せて6.7万円です。

 

 

最後に、2Fのプランを少し変えて、吹抜けを設けたプランを考えてみます。

【連続運転 2Fプラン変更】

・エアコン設置個所はリビングと2F寝室の2台を想定します。

(運転スケジュール)

リビング (暖房) 24時時間運転  (冷房) 運転なし

寝室   (暖房) 運転なし    (冷房) 24時時間運転

トイレの位置を変えて、子供室1を北側の角に、南の中央に吹抜けを設けました。

運転スケジュールについては、エアコンの同時使用はなしで再度検討してみます。

居室連続運転で一番寒かった1月28日の8時の寝室の温度は16℃から17.7℃になりました。

これで十分かと言うと、まだ少し2Fは寒いと感じるかもしれませんが、太陽が出ている28日であれば午後の子供室でも19~21℃程度になっています。

この条件の場合では、リビングに14畳用、寝室に8畳用のエアコンが最低限必要となりました。

 

光熱費は、暖房費約5.5万円、冷房費は約1万円で計6.5万円でした。

夜間電力を考慮すると暖房費約4.6万円、冷房費は約0.9万円で計5.5万円です。

 

このように、設計プランと運転方式によって適正なエアコンサイズはかなり変わります。

どんな使い方にも対応できるよう大きめのエアコンを設置するのも手ですが、高断熱住宅でコストパフォーマンスを考えるなら、日射の力を利用して、出来るだけ必要容量を小さくし長時間のゆっくり運転(効率を高めた運転)が望ましいと考えます。もちろん日射を最大限取り込むことで、冬のエアコン稼働を少なくする(無暖房住宅に近づける)のもありかと思います。

 

これから家づくりを考える方は、これからの生活スタイルにあったエアコンの運転方法を検討してみてください。

 

TAKANAKA