接合部の重要性

木造住宅の構造では、耐力壁も重要ですが、接合部の設計もとても重要になります。

なぜ重要なのかというと、壁が多少壊れても家は倒壊しませんが、接合部が壊れて外れてしまうと家は簡単に倒壊してしまうからです。

接合部と言っても、木造の接合部はいろいろあります。

基礎と土台の接合部、土台と柱、柱と梁を繋ぐ接合部、梁どうしを繋ぐ接合部、軒桁や母屋と垂木を繋ぐ接合部、面材を留め付ける接合部など、木造の強さは接合部の設計次第と言っても過言ではないほどです。

接合部設計で重要なのは、耐力壁が壊れるより先に接合部が壊れないような設計をするということです。

耐力壁の強さに応じた接合金物を取り付け、局所的に強い力が掛からないようなプランニングが望ましいです。

接合部に負担を掛けすぎないようにするにはいくつかポイントがあります。

・まずは建物形状がなるべく整形でバランスがよいこと
→形状が複雑になると、壁の入隅部分の接合部に力が集中しやすくなる
→扁平な建物は長手方向の外周梁中央付近の接合部(継手)に大きな負荷がかかる

・強い耐力壁を局所的に配置するよりも、強すぎない耐力壁をできるだけ多くバランス良く配置する
→プランによっては、強い耐力壁を配置する必要がありますが、相応の接合部材で対応できるか検討します。

・構造計算によって、部材の曲げやせん断に対する負荷の小さい位置に継手を設ける
→スパンの大きな梁内側や梁上耐力壁が載っている梁の柱間などには継手を持ってこないようにする

これらを検討したうえで、次に金物補強によって必要な耐力を確保する流れになります。

接合部の設計(柱頭、柱脚)方法には、大きく3種類あります。

一つ目は、基準法の告示の表から選択する方法、二つ目は、同告示のN値計算による方法、三つ目は構造計算によって求める方法です。

1から3の流れで詳細な計算になっていきますが、実は詳細な計算に行くほど耐力の小さな金物で済む結果となることが多いです。(もちろん逆に引抜力が大きくなる場所も出てきます)

なので、設計士によっては、(経済性だけを考えて)接合部の金物を出来るだけ耐力の小さくすることを良しと考える方もいらっしゃいますが、その考えはちょっと危険かなと感じます。
(局所的に負荷が集中しないように分散させるという意味でしたら良いのですが)

接合部の設計方法は、2000年の基準法改正で大きく変わりました。2000年以前は、耐力壁を配置するほど、壁の1か所あたりの負担する地震力や風圧力が減る(分散される)という考えで、耐力壁の数が増えると金物の強さを小さくすることが出来ました。しかし、阪神大震災の時に接合部が壊れて倒壊している建物が多かったために、2000年の基準法改正で、柱頭・柱脚の接合部は、壁の存在応力ではなく、許容せん断耐力で設計するように変わっています。(つまり、耐力壁の数には関係なく耐力壁のもつ強さに応じで金物を選定することになっていますので、耐力壁の数が増えても必要な金物の強さは落ちません)

こういった法的な変更もありますが、ちょっとつっこんだ話をすると、大地震時はどうなの?ということです。

建築基準法では、稀に起こる地震で損傷がなく、極稀に起こる地震で倒壊しないことと決められています。

稀に起こる地震とは中地震を想定し、極稀に起こる地震が大地震にあたりますが、地震の計算上はそれぞれ、建物の自重の0.2及び1を掛けた数値によって、建物を横から押しているとみなします。
(実際は各階の中間から上の重量だったり、地震力にも細かな係数などがありますがここでは省略しますね)

またそれぞれ中地震の検討を一次設計、大地震の検討を二次設計といいますが、木造住宅では基本的には一次設計のみしか行いません。
これは、一次設計で用いられる壁の強さの数値(壁倍率など)には、壁が壊れるよりもっと前の安全率が見込まれた数値で設定されており、中地震で損傷しなければ、極稀におこる地震でも倒壊は免れると考えられているからです。

では、実際の大地震で倒壊しているのはどうしてかと考えると、極稀に起こる地震で想定されている力よりも大きな地震力が掛かっているからです。

    (図は気象庁HPより引用させて頂きました)

図の縦方向が加速度応答(G)、横方向が時間(秒)ですが、赤い線で引いた部分が1Gのラインで基準法で想定している極稀におこる地震の強さです。

ここ数十年の間に、1Gラインを超えている地震は結構あります。

必要壁量が基準法ギリギリを満たしているだけでは、1G以上の大地震で倒壊する可能性は高くなりますし、倒壊を免れても住み続けられない可能性も高くなります。

だからこそ耐震等級3は普通に必要と考えていいですし、強い壁が増えるなら、それに耐えられる接合部が必要になるということです。

接合部だけではないですが、大地震時のシミュレーションをして倒壊しないかどうかを検討するにはwallstatも活用できます。

上の図は耐力壁は同じく入っていますが、接合金物の強度が違います。左は4隅のみホールダウン金物を設置した場合、右は、数回シミュレーションして、少し弱い部分を補強していった後です。

それと、見てもあまり面白くないところですが、基礎のHDアンカーの数なんかを見ても、地震に強い家かどうかなんとなく分かります。

長くなってしまいましたので、今回はこの辺りで。

TAKANAKA