床下エアコンと壁掛けエアコンの違いについて
前回に引き続き、床下エアコンの話をしたいと思います。
床下エアコンを導入するにあたり、通常の壁掛けエアコン設置工事+αの費用が掛かってきます。
はじめて検討される方は、費用を掛けてまで床下エアコンをやるメリットって何なのか?
壁掛けエアコンとどんな違いがあるのか?など、いろいろと疑問があるかと思います。
今回は、床下エアコンと壁掛けエアコンとの違いについて書いてみます。
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まず、床下エアコンというのは、簡単に言ってしまうと、エアコンから吹き出す暖気を床下に送り込み、家中を暖めるように考えた方法です。
家中を冷暖房するシステムでは、メーカーが取り扱っている全館空調システムというものがあります。
一年中、快適な室温で過ごせるのが最大のメリットではありますが、導入コストも150~180万円程度掛かり、10数年後の設備交換時も結構な費用が掛かります。
(もちろん家の中の温度ムラは少ないので、家中の温度差もなく快適さを何よりも重視されたい方にとってはお勧めできるシステムです)
それを、汎用のエアコンで全館空調(全館暖房)を再現しようと考えられた方法が床下エアコンということになります。
通常の壁掛けエアコンとの違いは、床下に暖気を送ることにあります。
そうすることで、各部屋ドアを閉めていても、少なくとも1階エリアには暖気が行き渡ります。
(2階はどうなのかというと、エアコンの配置計画、吹抜けの有無や床下エアコンの暖気を2Fに上げる計画を考えるかどうかで少し変わってきます。)
1つ目の違いは、床下エアコンの場合は、リビングや個室などエアコンを設置している部屋だけでなく、廊下やトイレ、脱衣室や浴室も暖かい状態になるということです。
サーモカメラで見ていただくと、その違いが分かります。
(通常のトイレの表面温度)
(床下エアコン稼働時のトイレの表面温度)
(通常のユニットバスの表面温度)
(床下エアコン稼働時のユニットバスの表面温度)
※写真は一例となります。エアコンとの位置関係で必ずしもこのような表面温度になるとは限りません。
冬は脱衣室や浴室の寒さで、ヒートショックの危険性も高くなります。特に、寒い東北や北海道よりも、それなりに温暖な地域の方が、ヒートショックになる確率が高くなります。
(リンナイ調べ https://www.rinnai.co.jp/releases/2018/1101/index_2.html)
電気代、ガス代が高騰し、暖房を極力控えて生活されている方もいらっしゃるかと思いますが、ヒートショックにならないためにも、脱衣室や浴室を暖かくすることは重要になってきます。
2つ目は、エアコン総台数を減らせるということです。
壁掛けエアコンの場合は、各部屋にそれぞれエアコンを設置するのが一般的ですが、床下エアコンであれば、1台で1階の各部屋にはまとめて暖気を送ることができます。
エアコンの台数が減れば、室外機も減り建物の美観を保ちやすくなりますし、エアコン交換時のコストも下がります。
3つ目は、暖かさの感じ方も違ってくることです。
床下に暖気を送るということは、当然、暖まる方向が下から上になります。(壁掛けエアコンの場合は上から下に暖気が吹き下ろす形です)
冬場、特にエアコンの暖房をつけ始めたときに、頭と足元で感じる温度差が大きく不快感を感じたことはないでしょうか?
これもサーモカメラで見ていただくと、下の写真のように違いが分かります。
(壁掛けエアコンをつけ始めたときの個室の床の表面温度)
(床下エアコンをつけているときの個室の床の表面温度)
壁掛けエアコンも、しばらく稼働させていれば床まで暖まりますが、つけ始めはどうしても床との温度差が出てきてしまいます。それは暖かい空気は上に昇っていく性質があるためです。
床下エアコンの場合は、最初に部屋の一番下となる床が暖まるため、床の冷たさを感じることはほとんどなくなり、エアコンから吹き出す風が直接当たる不快感が無くなるのも特徴の一つです。
4つ目は運用方法の違いです。
壁掛けエアコンの場合、居るときに居る部屋だけエアコンをつける方が多いと思います。若しくは、24時間連続運転をされる方もいらっしゃると思います。
床下エアコンの場合は、連続運転が基本となります。
1台のエアコンで、家全体を暖めるということは、暖める必要がある空気の量も増えるということですから、家が暖まるまでに多少時間がかかります。エアコンを一度消すと、次に暖まるまでに時間がかかるため、基本は連続運転を想定します。
そうなると、暖房にかかる光熱費が気になるところです。
暖房による光熱費を出来るだけ抑えるためには、家から漏れていく暖気を減らすこと、そして出来るだけ自然の太陽の光を取り込むことにあります。
それらをしっかりと計画すれば、暖房にかかる費用は、通常のエアコン使用時に比べ若干多くなるか、さほど変わらない程度か、計画次第では暖房費が下がることもあるかと思います。
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床下エアコンを計画する場合は、その他にも抑えておくべき部分がありますので、見よう見まねでやるのは少しリスクがあります。
家づくりは、構造、温熱、結露など、どれも物理的な要素が大きく関係してきます。家に起こる事象を物理的に計算などをして考えられる方がいれば安心かと思いますが、そうでないなら少し注意が必要です。
もし床下エアコンを計画される場合は、シミュレーションなどで事前に暖房負荷などを計算して計画できるか、実績があるかどうか、実際に室温データなど実測したデータがあるかどうかなど聞いて頂いて、暖かいお家を計画していただけたらと思います。
TAKANAKA