空調計画はプランニングの段階で

最近では、設計時にエアコンの配置計画や空調計画、エアコンサイズなどについて、意匠設計士さんやお客様と打合せする機会も多くなってきました。

普段、多くの時間を過ごす住宅で室内の空調計画を考えておくことは、家族が快適に過ごすためにとても重要な要素の一つと考えます。

ただ一点、家の空調計画について少しもったいないなと思っていることは、プランニングは建築士の仕事、空調はメーカー(専門家)の仕事、というように分けて考えるのが普通と思われていること、若しくは、エアコンの畳数表示のみを頼りにエアコンを選定してしまうことです。

「餅は餅屋に任せる」というように、専門家に依頼することは全く悪いとは思っていませんが、少し問題かなと感じるのは建築士が空調のことをほとんど考えずにプランニングを終えてしまうことです。(これは構造計画についても、全く同じことが言えるのですが、、)

エアコンを計画する際に、多くの建築士が考えるのは、

「エアコンはどの部屋(位置)につけるか(計何台必要になるか)」ということではないかと思います。

上の問いに対して、現状、私が最も良いと考えているのは、

「エアコン台数は出来るだけ少なく出来るだけ自然エネルギーを活用したり、家の断熱性を高めて冷暖房にかかる消費エネルギーを少なく、メンテや入れ替えに出来るだけ手間や費用が掛からず家全体を冷暖房すること」です。

、、あれ、答えになっていないではないかと思うかもしれませんが、その通りです。

どの部屋に何畳用のエアコンをつけるから始めるのではなく、家全体に対して適切な空調を計画できないかについて考えたいということです。

まず、エアコン台数が少ないことのメリットは、エアコンなどの設備機器は年月が経つと必ず交換が必要になるので、台数が減る分の交換費用が安くなることです。さらに、室外機の数も減るので外観の見た目への悪影響も少なくなります。

また、現在主流の壁掛けエアコンであれば十数年後の交換時もおそらく残っているだろうし、機器の性能向上、機器代金のリーズナブルさも見込めるのではないかと予想できますので汎用エアコンで計画できるのであればそうしたいです。

次に、冷暖房にかかる消費エネルギーを少なくすることは、冷暖房費を減らすうえでも考慮しておきたい点です。
まずは隣家等の日影の影響や日当たりを把握し、冬は日射を取り入れ夏は日射を遮る、というような太陽に素直な設計を心掛けることが必要と考えます。それが難しい場合には費用は掛かりますが、断熱性を上げたり、熱交換型の一種換気を採用することで、冷暖房に掛かるエネルギーを抑えることも可能です。

最後に、家全体を冷暖房することは、室間温度差を減らすことを目的としています。それらは、快適さを感じる上で大きな要素になっているからです。

廊下や脱衣室、トイレ、浴室などが、リビングと変わらない室温であれば、家の中での活動量(パフォーマンス)も良くなるのではと個人的には考えています。
(直接的なエビデンスではないですが、参考のURL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej/68/11/68_635/_pdf/-char/ja)

しかし、家全体を冷暖房することは、そうするための工事費が掛かってきたり、間欠冷暖房時に比べると、必要となるエネルギーが多少多くなったりします。

快適性とコストを天秤にかけた場合に、お客様がちゃんと判断できるように設計士はシミュレーションの活用や実測データ収集などに努める必要があると考えます。

家づくりについて最初のご要望を伺う中で特に多いのは、今住んでいる家が、夏は暑かったり冬は寒かったりするので、快適に過ごせる家に住みたいということです。

住宅の建築士は、お客様の理想のくらしを実現するために、温熱環境、空調計画も考えたプランニングをしていただきたいと考えます。

TAKANAKA