耐震とwallstatの活用について

wallstat(ウォールスタット)という耐震性のシュミレーションを目で確認できるフリーソフトをご存じでしょうか?

このソフトは京都大学の中川先生が開発したソフトで、8~9年前から公開されていますが、本当に優れたソフトだと思います。

このソフトが出来る前は実物大実験といって、研究施設を持っている大きな会社だけが、実際に家を組み立てて地震動を与え、倒壊するかしないかなどを確かめるしかなかったので、1棟検証するだけでもかなりの手間と時間、お金が必要でした。工務店規模の会社には、そういったことはまず無理で、実際に建てられる住宅は決められた壁量や構造計算はするものの、その建物が現実の地震に対してどうかというのは良くわからないというのが実際のところでした。

このソフトを使用すれば、それがシミュレーション上で確認でき、かつフリーソフトなので、誰でもダウンロードしていただければ耐震性を確認することが可能です。

(基本操作はそこまで難しくないので、中川先生のYOUTUBEの初期編を見ながら、一緒に入力をしていただければ一番分かりやすいかと思います)

実際に入力する場合に必要なものは、

・各階の平面図(耐力壁配置や寸法が入っているもの)

・高さ寸法が入った立面図

・1F床伏図、2F梁伏図、小屋伏図

・構造金物図

・床や耐力壁の仕様(最初はこのパラメータ入力が一番面倒かもしれません)

・(矩計図)(壁や床の仕様が分かるもの)

 

とは言うものの、実際に柱や梁の配置ぐらいまでは、ある程度簡単に入力できるのですが、壁倍率や床倍率、金物の入力ははじめての場合はなかなか難しいかもしれません。

wallstatに入力する耐力壁のパラメータなどは、各メーカーなどから建材の試験データを貰い、それをwallstat入力用に換算して入力するという形になりますので、このあたりが少し手間ではあります。

そこで中川先生が伏図や金物の入力をしなくても使用できるお施主様向けwallstatを現在開発中とのことなので、使用してみたいという方は期待して待っていてください。

(計算の待ち時間が大幅に短縮されたver.5もまもなく出るみたいです)

 

wallstatの良いとことは、耐震性を目て見て確認できるところなのですが、それだけではありません。

熊本地震のように複数回に渡る大地震の場合、1回目の地震の損傷具合を考慮した2回目以降の地震の検討も可能です。

(これが出来るのは、60m以上の高層建築の構造解析で義務付けられている時刻歴応答解析と同じ解析をwallstatで行っているからです。これを簡単に使用できるようにしてくれて、かつフリーソフトで公開してくれている中川先生もほんとに素晴らしいなと思います)

許容応力度計算では、ある方向から地震力を与えたときや家そのものの重さに対して、柱や梁など各部材の耐力が持つかどうかということは検討できますが、家が新築の状態で、かつ1回の地震に対しての検討になります。なので、2回目に同じ地震が来たら耐えられるかどうかまでは検討できません。これから来る大地震の限度を知ることはできませんが、これまでに起きた過去の地震に対しては耐えられるかどうかというのは確認する術があるので考慮することが重要ではないかと思います。

 

また、私が一番活用していて素晴らしいと思うのは、損傷具合が分かる部分です。

これは、許容応力度計算をした金物配置と仕様規定で計算された金物配置というのは基本的に多少変わるものですが、それだけでは見えない部分を検討することが可能です。

計算の設定にもよりますが、許容応力度計算をした建物の金物配置は、耐力壁がなければ基本的に弱い金物でももつと出ます。しかし、シュミレーションをすると、柱が抜けてしまったり、壁が大きく損傷してしまう場合もあります。その場合、耐力壁の配置や金物強度を見直すことでより耐震性に優れた住宅を目指すことができます。

このほかにも有効な使い方がありますが、また、機会があれば書きたいと思います。

 

興味のある方は下記にYOUTUBEのリンク貼りますので見てみてください。

【wallstat youtube動画】

(1) 16 wooden houses with different shear wall strength, wallstat movie – YouTube

→同じ建物で耐震性の強さ別にシミュレーションした動画(耐震等級3(1.5)以下の建物が倒壊してしまっている)

(1) wallstatの使い方【初級編②】1Fの入力 – YouTube

→中川先生の初級編の動画。(wallstatの紹介や入力方法など)

(1) 【構造ライブ!】構造計算の続き!耐震等級1でWallstatで揺らしてみる!ホームズ君構造EXで – YouTube

ラグジュの本橋さんが耐震等級1でwallstat入力した動画。おかしいなと思ってコメントみたら計算間違っていたようですね。

梁伏組んだり会話や動画は結構楽しめると思いますのでよかったら。

 

TAKANAKA