南面窓ガラスの日射遮蔽型、日射取得型の違いによる室温シミュレーション

以前のブログで自立循環型住宅のモデルハウスを使って、隣棟のありなし(南面への日射のありなし)による室温シミュレーション比較を行いましたが、今回はその続きとしまして、南面窓ガラスの日射取得型と日射遮蔽型の違いによる室温をシミュレーションしてみたいと思います。

(よろしければこちら以前のブログです)

太陽の日射熱の効果と断熱性についての室温シミュレーション

窓ガラス(サッシ含む)にもたくさんの種類がございますが、今回は樹脂サッシ+複層LOW-Eガラスの想定で比較してみます。

 

【今回シミュレーションで使用した自立循環型住宅のモデルハウス】

(1F平面図と2F平面図 ※延べ面積は約120㎡(36坪程度)

 

 

(モデルハウスの外観 北西の角が十字路になっており、東、南東、南に隣家がありますが、今回は隣棟なしとしてシミュレーションします)

 

(共通条件)

・地域条件は千葉県の我孫子(6地域)を想定

・時期は冬場(1月28日 快晴)を想定

・冷暖房は一切使用しない状態(自然室温)にて比較

・(内部発生熱として)4人家族、住宅事業主の判断基準による生活サイクルを想定

・建物の外皮平均熱貫流率(UA値)は、0.46W/㎡・K(断熱等級6(6地域))

・開口部の熱貫流率(Uw値) 1.4W/㎡・K

・今回は、南面に日射が得られることを前提とするため、隣棟はなしで考えます。

・東西北面の窓は日射遮蔽型とします。

ここで、南面の窓を、日射遮蔽型(日射取得率0.28)から、日射取得型(日射取得率0.45)に変えた場合の室温変化を見てみます。

 
(日当りシミュレーション)

(実際の計画では、ここまでしっかりと南面の日射が得られるケースも少ないとは思いますが)

 

(南面の窓を日射遮蔽型とした場合の室温変化)

 
グラフは、青線が外気温度、緑線が室内(リビング)の温度、黄色の棒グラフが建物への日射熱(合計)を表しています。(改めて、冷暖房は使用していない温度となります)
南面のガラスが日射遮蔽型の場合は、28日のリビングの最低室温は朝の7時で8.3℃、最高室温は14時で16.4℃となっています。建物全体の総日射熱は34,242Wh/日となりました。

 

(南面の窓を日射取得型とした場合の室温変化)

 

南面のガラスが日射取得型の場合、28日のリビングの最低室温は朝の7時で8.9℃、最高室温は14時で18.2℃となっています。建物全体の総日射熱は41,086Wh/日です。

ガラスが日射遮蔽型から日射取得型に変わると、最低室温は0.6℃上昇、最高室温は1.8℃上昇する結果となり、一日の日射取得熱は、6.84kWh増える結果となりました。
(単純計算ですが、6.84kWhの熱量は、電気代を40円/kWh(再エネ賦課金、燃調費含む)とすると、エアコンでの暖房費(COP3)に換算して91円安くなる計算です。)
ガラスの違いで、このぐらい室温を変えるインパクトがあるということが分かるかと思います。(通常はこの変更に費用は掛かりません、もちろん発注前でしたら、、)

今回は、日射取得率0.28と0.45としましたが、このあたりもサッシメーカーによって違いがありますので、日射取得率が0.5以上のガラスでしたら、室温はもっと上昇すると考えられます。
さらに、細かいことをいうと、サッシ枠の種類や見付け幅も影響しますので、同じ大きさの開口部でも、ガラス面積に対して、枠の幅が割合が多い引違い窓よりも、少ない片引き戸のほうが日射取得量は増えますし、さらに少ないFIX窓ならもっと日射取得量は多くなります。(そしてFIX窓の方が金額は安いのも魅力的です)ですので開ける頻度が少ない窓は、思い切ってFIXにするというのはありだと考えます)

 

ですが、夏場においては、遮りたい日射をより取得してしまうということが考えられます。

この辺りは、個人の温熱感覚がそれぞれ違うため、家の計画について、夏を旨とするか、冬を旨とするかを考えていただくと良いかと思います。

ただ、私は、個室においては、ガラスを選択してもよいと考えますが、リビングなどの共用空間では、日射取得型をお勧めしたいと思います。

その理由は、

・夏の日射については、カーテンやすだれ、アウターシェード(または植栽)などで遮蔽対策が可能だが、冬の日射取得量は増やすことはできない

・夏の冷房費よりも冬の暖房費の方が、3~5倍高くなる(計画によりますが)

と考えています。

 

最後に、省エネで快適な温熱環境にするためにお勧めしておきたいことを書き出してみます。

・冬場はできるだけ南面からの日射が得られるプランが望ましい

・庇やアウターシェードで夏の日射遮蔽についても計画できていると良い

・南面の窓は日射取得型を検討してみる。(ただし、陽がほとんど射しこまない窓は、日射遮蔽型の方が良いかもしれません。日射遮蔽型の方が若干ですが断熱性が良いため)

・冬場の日射確保が難しい場合は、(ご予算次第ですが)断熱を1ランク上げて考えることをお勧めします。(日射が得られない場合は、寒くなりやすいので暖房費も高くつくため)

・換気設備については、3種換気の方が初期費用、ランニングコスト共に安くなりますが、快適性を重視したい場合は熱交換型の1種換気を検討してみる。
(こちらも別途シミュレーションをアップしてみようと思いますが、冬場の自然室温が1~3度程度変わってきますし、全熱交換タイプでしたら、冬場に起きやすい過乾燥も和らぎます)

以上、ご参考になれば幸いです。

TAKANAKA