「オール電化をやめたい」と後悔しないための注意点は?
導入前に知っておきたいポイントや対策を解説

オール電化は今や特別ではものではなくなり、程度の違いはあるものの多くの住宅に採用されています。「光熱費が安くなる」「環境に優しい」など、なんとなくのイメージで建築会社から勧められるがままに決断した方も多いはずです。ところが、残念ながら「オール電化をやめたい」と後悔する人は少なくありません。

では、その理由はどのような点でしょうか。今回は、オール電化を後悔した方の理由からその注意点を明らかにします。デメリットや対策を知れば、オール電化を“失敗”しません。

これから新築を計画しようと検討中の方はもちろん、今お住まいの住宅のオール電化をお考えの方も、ぜひ参考にしてください。

このコラムのポイント
・オール電化のメリットを生かしきるためには、生活リズムやライフスタイルに合うかどうかを検討してから導入することをお勧めします。
・電気を使う時間帯によっては、光熱費が上がってしまうなどのリスクも伴うため、メリット・デメリットの両方を理解しておきましょう。





ZEH住宅や省エネ住宅には欠かせない「オール電化」

オール電化とは、設備機器を全て電力で稼働させる住宅のことを言い、IHクッキングヒーターや電気温水器や自然冷媒ヒートポンプ給湯機(エコキュートなど)、太陽光発電システムなどを備えています。

その歴史は意外と古く、1980年代後半から徐々に機器が普及し始め、2000年に入るとエコキュートを始めとした高効率の電気温水器が販売され、オール電化住宅が増え始めました。その後微増を続けていた中、2016年に電力自由化が法整備され、さらにオール電化を選ぶ方が急増し、2020年を超えると全国で100万件(東京電力調べ)まで増加しました。

では、そのメリットはどのような点なのでしょうか?主な利点は以下の3点です。

  • 光熱費をまとめられ、節約しやすい
  • 火事のリスクが軽減できる
  • 災害時の復旧が早い


オール電化ではない住宅は、光熱費がガス・電気・水道の3種類ですが、オール電化にすると電気・水道の2つに集約できます。そのため、家計の管理がしやすく基本料金を節約できます。

そして、ガスによる爆発事故のようなことが起こらないため、安全面でもメリットがあります。特に、IHクッキングヒーターですと調理中に袖口に着火してしまう「着衣着火」を防げるため、高齢者用住宅でも積極的に採用されています。

最も大きなメリットが、災害時における復旧の速さでしょう。地震でガス管や水道管が断絶してしまうと、復旧にかなりの日数を要します。しかし、電気配線ですと、比較的早く修理ができると言われています。

東日本大震災では、被災からなんと2日で約90%のエリアにおいて復旧が完了しました。

引用;内閣府|防災情報のページ

さらにここ近年、一般住宅向け太陽光発電システム設備の価格が下がっていることもあり、自然エネルギーを電力に変えて使う「環境配慮型住宅」も一般的になりつつあります。特に、HEMS(Home Energy Management Serviceの略)という家庭内の電気使用量や機器の稼働状況を制御して、節電するシステムを導入する住宅も増加傾向で、最近話題の「ゼロエネルギー住宅・ZEH」や、「パッシブハウス」もその一種です。

〈関連コラム〉
下記コラムでは、ZEH住宅やパッシブハウス、HEMSを使ったスマートハウスについて詳しく解説しています。合わせてご覧ください。

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オール電化の失敗例や後悔した理由は?デメリットや対策はある?

地震大国である日本では、万が一の時に備えてオール電化を採用する方が多いですが、残念ながら実際に住み始めてから「ガス機器に取り替えた」「オール電化にして後悔した」という方もいます。では、その理由はどのような点なのでしょうか?

ここでは、主な理由とその解決方法を4つ紹介します。

その① 光熱費が高くなった

オール電化にすると無条件で光熱費が安くなると勘違いしてしまう方もいますが、住まい方によっては一概にそうとも言い切れません。なぜなら、各電力会社が設けているオール電化用料金プランは、夜間電力が割安になるものがほとんどだからです。商品によっては、むしろ昼間の電気料金が通常プランより高いものもあります。

つまり、日中各設備機器などを使用する時間が長いご家庭では、オール電化前よりも光熱費が上がってしまうことや容易に想定できます。昼間に家にいる時間が長い方や、ご自宅でお仕事をする方は、各社電気料金プランをじっくり検討して、損のないものを選びましょう。

そして、初期費用はかかりますが、太陽光発電システムを併用することもおすすめです。効率よく発電できる立地条件であれば、余剰電力を電力会社に売ることもできますし、災害時も通常通りの生活を維持できるため、既存住宅への導入を検討する方も少なくありません。

その② 停電時に何もできない

先ほど、オール電化のメリットとして「災害時の復旧が早い」とお話ししましたが、ここでも注意しなくてはいけない点があります。それは、「復旧するまでは何もできない」という点です。キッチンのガス調理器はガスさえ通っていれば停電時も使用できますが、IHクッキングヒーターはもちろん使えません。

動力を電力にまとめることは、管理面でメリットがあるものの、停電時は全く機能しなくなります。ただし、この場合も太陽光発電システムを導入すれば、自家発電で復旧までの間を補填できます。ガス・電気のライフラインが止まっている状態でも、自然エネルギーを使って調理・給湯ができる点は、災害時のこころ強い味方となるでしょう。


その③ メンテナンス費用がかかる

オール電化機器の多くは精密機械で制御されているものが多いため、どうしても定期点検やメンテナンスは欠かせません。また、取り替え時はそれなりのまとまった費用がかかります。

ただし、機器によってはガス機器よりも寿命が長いため、長い目で見るとお得とも言えます。

オール電化耐用年数
自然冷媒ヒートポンプ給湯器(ヒートポンプユニット)5〜15年
自然冷媒ヒートポンプ給湯器(貯水ユニット)10〜15年
太陽光発電設備17年
(法定耐用年数)
IHクッキングヒーター10〜15年
非オール電化耐用年数
ガス給湯器10年前後
ガスコンロ6年(法定耐用年数)〜10年

短期的に見ると、オール電化機器は修理や交換にコストがかかるため損に感じるかもしれませんが、ずっと住み続ける住宅においては、決して損ではありません。特に、太陽光発電システムによって電気代を節約、さらに売電収入があれば、さらにお得になります。


その④ エコキュート(自然冷媒ヒートポンプ給湯器の欠点が気になる

オール電化の主役とも言えるエコキュートですが、従来の電気温水器やガス給湯器と比べると、異なる点がいくつもあります。

  • 設置場所をかなり広く確保しなくてはいけない
  • 夜間の運転音が気になる
  • 水道の水圧が下がってしまう場合がある


まず、従来の置き型・壁掛け型の給湯器と比べて、エコキュートは本体サイズがかなり大きくなります。最近ではスリムタイプもあるものの、貯水(貯湯)タンクユニットとヒートポンプユニットを合わせると、ある程度の面積が必要です。

エコキュート設置場所
引用:中国電力|エコキュートの設置工事


取り付け後に邪魔にならないように、設置場所を施工会社としっかり検討しましょう。

そして、もう一つ注意しなくてはいけないのが、夜間の運転音です。エコキュートは貯水タンクが空になると、自動的に水を足して沸かし始めます。音は図書館程度の音と言われていますが、夜間ですとやはり耳障りです。寝室に近い場所に設置すると、入浴後就寝した頃にモーター音が気になって眠れない…という声を聞くことがあります。

ですから、キッチンや浴室の近くなど、出来るだけリラックスタイムを邪魔しない場所に設置することをお勧めします。

その他、ガス給湯器からエコキュートに変えて「水圧が下がった」というケースも稀にあります。機種によっては設定最高水圧がガス給湯器よりも低い場合があるため、その点についても施工会社やメーカーに確認しましょう。



オール電化はこんな方におすすめ

オール電化は確かにメリットが多いですが、生活リズムやライフスタイルによってその利点を生かしきれない場合もありますので、本当に後悔しないかをじっくりと検討しましょう。

オール電化の住宅に向いている方は以下のようなご家庭です。

  • 環境問題への意識が高く、積極的に自然エネルギーを活用したい方
  • 光熱費の契約を出来るだけ少なくして、管理しやすくしたい方
  • 日中留守にすることが多く、あまり電気やお湯を使わない方
  • 敷地に余裕があり、太陽光発電が効率的にできる家にお住いの方
  • 長期間家を空ける機会が少ない方
  • 寒冷地にお住いではない方 …


エコキュートやIHクッキングヒーターだけでは環境問題への対策にはなりませんが、太陽光発電システムを導入すれば、地球温暖化抑制などに大きく貢献できます。そのため、環境問題への意識が高く、積極的に取り組みたい方にはおすすめです。

また、家計管理を楽にしたい方や、日中留守にして主に夜間に電気を使う方にもオール電化が適しています。ただし、太陽光発電システムを導入したい場合は、住宅密集地ですと日陰になる時間帯が長くなり、発電効率が落ちてしまうので注意しましょう。

そして、旅行が好きで頻繁に長期間家を空ける方も要注意です。エコキュートの貯水タンクは、一ヶ月以上使わない場合には「水抜き」をしなくてはいけないからです。

また、寒冷地ではエアコンなどの電気空調機だけでは室内を暖めきれず、結局灯油ヒーターなどを併用するご家庭も少なくありません。さらに、外気温が低すぎるとエコキュート内の水がなかなか温まらないという現象も起きます。

このように、オール電化が全ての住宅にとってメリットになるとは限りません。導入をする際には、必ず「損しないか」「生活スタイルと合っているか」をじっくりと検討して、後悔のないオール電化を目指しましょう。



まとめ|ライフスタイルに合わせてオール電化を導入しましょう

今回は、オール電化導入後に後悔しないための注意点を紹介しました。オール電化はメリットが注目されるため、あまり深く考えずに取り入れる方が少なくありません。しかし、生活リズムやライフスタイルに合っていないと、逆にコスト面で損してしまったり、居心地の悪い家になってしまう可能性もあります。

ぜひ、今回紹介した内容を踏まえて、オール電化を検討してみてください。

私たち日建ホームは、お客様のご要望やライフスタイルに最適の住宅をご提案いたします。土地探しや住宅ローンのご相談、敷地の環境調査、インテリアコーディネーターによるデザインのご提案など、各専門スタッフがチームでお手伝いさせていただきますので、ぜひお気軽にご相談ください。



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日建ホーム編集部

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